「よるねこ」
集英社文庫
●文芸評論家・結城信孝/掲載誌 VISA・快適生活マガジン・2002・10・369

「ホラー小説の定型を打ち破ったカラフルな恐怖小説集の奇妙な味」

特異な感性で、一作ごとに新しい作品世界を展開させる姫野は、女性のあくなき変身願望を綴った『整形美女』(新潮社)以降、3年以上も長編が出ていない。

エッセイ集をはさんで『蕎麦屋の恋』(イースト・プレス)、『サイケ』(集英社)、『特急こだま東海道線を走る』(文藝春秋)と、すべて短編集。今回 の新刊も、「小説すばる」に発表した8篇を収めたホラー作品集である。

4つの短編集を横に並べてみると、それぞれ異なった味わいを持っていて、〈姫野ワールド〉とでも名付けたくなるほどの独自の才気がみなぎっている。

アンチ恋愛作品集、70年代を思い起こさせるエロスの結晶、レトロ感覚にみちた60年代物語集……というようにどれをとっても、テーマと切り口が微妙なバランスを保っている。

著者にとっての初の試みとなるホラー小説集『よるねこ』のアプローチも、やや食傷気味の定番ジャンルに、新たな楔を打ち込んだ。素材こそありきたりだが、調理法ひとつでまったく別の味覚を提供してくれるあたり、やはりこの作家は凡手ではない。そう実感させるだけの手応えがある。

おなじみの学校の怪談を、ひとひねりした表題作「よるねこ」。女性の恐ろしさを痛感させる「女優」。「探偵物語」における奇妙な謎と恐怖のブレンド……。所収8話どれもが怖い。
--------

●TVstation[関東版]」2002/8/31〜9/13号」p123 「BOOK新刊ガイド」

「-映画にはできない恐怖-」

「猫は向こうのほうへ歩いていった」。唐突な母のひとことから、女学生時代の母が見た奇妙な光景が重なる表題作ほか、雑誌「小説すばる」に掲載された、幻想的なホラー短編小説を計8作品収録。「ひとよんでミツコ」(集英社)などの独特の哲学と発想力で多くのファンから支持される著者の、新境地ともいえる作品集。

毎日新聞 02.9.8に、児童文学作家 小森香折氏評。
web版のURLは↓
http://www.mainichi.co.jp/life/dokusho/2002/0825/09.html


書評目次へ
トップに戻る